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【社説】2020年12月2日:コロナ禍からの再生担うイエレン氏/ドコモ一体化への懸念を拭え

コロナ禍からの再生担うイエレン氏

記事本文

www.nikkei.com

要約

前FRB議長のイエレン氏が米財務長官に就任することを契機に、さらなる景気回復を期待したい。

感想

先日、トランプ大統領が政権移行作業を開始するよう指示を出したことについて記事を書きました。

platon.hatenablog.jp

これを受け、次期アメリカ大統領となるバイデン氏は政府の要となるポストに就く人物を続々と発表しており、財務長官として連邦準備理事会(FRB, Federal Reserve Board, 中央銀行)前議長のイエレン氏を指名しています。

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イエレン氏(出典:FRB)

www.federalreservehistory.org

日本で例えるなら、黒田日銀総裁が麻生さんの後任として財務大臣になるようなものでしょうか。

黒田総裁は元財務官僚なので、財務省と中央銀行両方を知っているという意味でも、イエレン氏と似ていますね。

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爆笑する黒田総裁

ちなみに現在のFRB議長はパウエル氏という方で、ブッシュ政権で財務省の次官補(局長)及び次官を務めており、こちらもイエレン氏と同じく財務省とFRBの両方を知った人物ですので、2人の連携に期待しています。

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パウエル氏(出典:FRB)

バイデン氏は他にも閣僚や経済チームに女性や黒人など、多様性を重視したポスト配置を行っています。

トランプ大統領が白人層の支持を取り込み、自国第一主義を掲げた政治を行っていたのと対照的ですね。

▼閣僚候補者。左上から時計回りにブリンケン氏(国務長官)、イエレン氏(財務長官)、サリバン氏(国家安全保障大統領補佐官)、ヘインズ氏(国家情報長官)、マヨルカス氏(国土安全保障長官)、ケリー氏(気候特別大統領特使)、グリーンフィールド氏(国連大使)。

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次期閣僚候補者たち(出典:The Guardian)

▼経済チームメンバー。左上から時計回りにラウズ氏(CEA:大統領経済諮問委員会委員長)、イエレン氏(財務長官)、アデエモ氏(財務副長官)、バウシー氏(CEA委員)、タンデン氏(行政管理予算局長)、バーンスタイン氏(CEA委員)。

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次期経済チームメンバー(出典:The Guardian)

一方で多様性やpolitical correctnessは大切ですが、保守層や白人層の不満をためこみすぎると、分断の溝が深まってしまいかねません。

対立ではなく、融和を目指す政治が行われることを願っています。

 

ドコモ一体化への懸念を拭え

記事本文

www.nikkei.com

要約

NTTがドコモを完全子会社することで、独占による市場の歪みが生じないよう政府は対策を打つべきだ。

感想

武田総務大臣は先月20日の閣議後記者会見で、NTTのドコモ子会社化について市場公正性が保たれるかを検証するため、有識者会議を立ち上げると説明しています。

総務省の資料によると、オブザーバーとして公正取引委員会も参加するようなので、独占禁止法に抵触しないか、という観点からも議論が行われることになるでしょう。

2020年11月20日(金)武田総務大臣閣議後記者会見(抄)

 電気通信分野の競争政策に詳しい有識者による「公正競争確保の在り方に関する検討会議」を設置し、12月3日に第1回会合を開催いたします
 先日、NTTによるNTTドコモの完全子会社化を目的とした株式公開買付けが成立いたしました。また、NTTでは、今後、NTTコミュニケーションズを含むグループ会社との連携強化について検討していくとしております。
 一方で、NTTドコモの完全子会社化などについては競争事業者から、公正競争上の懸念が示されているものと認識をいたしております。
 公社の独占事業であった電気通信事業を民営化し、競争原理の導入を図るために、昭和60年に通信自由化を行い、その後も市場の環境変化を踏まえつつ、累次の電気通信事業法改正などにより、電気通信市場における公正競争の確保のための制度整備を図ってきております。
 これらの状況や、情報通信産業における環境変化等を踏まえ、今般、電気通信市場における公正競争の確保の観点から、必要な方策について検討を行うために、本検討会議を開催することにいたしました。

www.soumu.go.jp

 

なおこれまでの総務省の見解は、過去の大臣会見の質疑応答からわかります。

長いですが、9月から現時点まで引用します。

要約すると、子会社化の話が出た段階では「NTTとドコモが分離した時代と社会環境が違うため、時代に合わせた健全なやり方を期待する」というある種の自由放任主義に似た見解を示してましたが、その後KDDIやソフトバンクなどの通信事業者から公正なルールづくりを求める意見書が提出されたことを受け、「法令にのっとり対処する」と述べています。

2020年9月29日(火)武田総務大臣閣議後記者会見(抄)

問:NTTが、NTTドコモを完全子会社化するという報道が出ています。これに関連して、会社側も今朝、本日の取締役会にかけるという発表をされていますが、この事案についての大臣のご見解と、併せて携帯電話料金の値下げに向けた備えという見方もありますが、この点についても教えてください。
答:いろいろと報道に出ていますけども、まだ決定がなされたとは伝わってきておりませんので、詳細についてのコメントは差し控えさせていただきます。決定があった段階で、改めてコメントさせていただきたいと思います。
問:はい。まず、90年にNTTから分離措置の命令を受けて92年に分離したという経緯がありますが、仮に今、この合併の話が進むとして、かつて分離したものが改めて子会社化になることを、今の競争環境も含めてどのように捉えていらっしゃるか伺えますでしょうか。
答:仮の話に私がコメントするのは差し控えさせていただきたいのですが、ご承知のように、当時は、固定電話というか、市内電話が圧倒的に多い時代でした。それから、車内電話や携帯電話の競争が始まろうとしている時代と、ここまで携帯電話が普及している時代とは、社会環境が明らかに違うと思うんですね。ですから、社会環境に合致した健全なやり方を、我々としては期待していきたいと思っています。 

2020年10月2日(金)武田総務大臣閣議後記者会見(抄)

問:携帯料金の関連で伺いたいんですけれども、先日のNTTによるドコモの完全子会社化の発表の記者会見の場で、携帯料金の値下げもこれによって検討したいという旨の発言がありました。この発言の大臣の受け止めと今後の対応方針を教えてください。

答:公表資料、皆様方もご承知と思いますけれども、「取組を通じた社会の貢献」とコメントをされておりました。大変良いことではないかと思います。
 また、株式公開買付手続中ですので、私の方から、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、正しい公正な競争が働く環境作りに今後とも努めていきたいと思っております。

2020年10月20日(火)武田総務大臣閣議後記者会見(抄) 

問:NTTが進めるドコモの完全子会社化についてお伺いします。先週、KDDIの高橋社長が、完全子会社化について政策論議がないまま走るのはおかしいというふうに述べました。それと、総務省に対して、このことについて子会社化で公正な競争が阻害されないか検証を求める意見を伝えると、このようにも述べました。これについて大臣の受け止めと、もし実際にKDDIが総務省にこうした意見を伝えてきた時にどう対応するのか、お聞かせ願いたいと思います。
答:KDDIの方から、先般のNTTドコモの完全子会社により、公正な競争が阻害をされないかというご指摘があったことは承知をいたしておりますが、今なお皆さんご承知のようにTOBの手続中でありますので、私の方からは具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、いずれにせよ、公正な競争がなされるように我々としては適時適切に対応していきたいと考えております。

2020年11月13日(金)武田総務大臣閣議後記者会見(抄) 

問:NTTによるドコモの完全子会社化についてお伺いします。この件については先日、KDDI、ソフトバンクなどの通信関連の28者が、公正な競争環境を確保するための措置を求める意見書を大臣に宛てて提出されました。利用者利益を損なうとして公開の場の議論を求めています。NTTは、法律上は問題ないとの認識を示していますが、この件について、大臣の受け止めと、今後の総務省の対応についてお伺いできますでしょうか。

答:NTTドコモの完全子会社化につきましては、KDDI、また、ソフトバンクなど28者の連名により、公正競争上の懸念などを示す意見申出書が11月11日に提出されました。
  意見申出書につきましては、電気通信事業法上、誠実に処理し、その結果を申出者に通知すべきものとされておりまして、法令に基づき適切に対応してまいりたいと考えております。

2020年11月17日(火)武田総務大臣閣議後記者会見(抄) 

問:NTTによるドコモのTOBについてなんですが、16日にこれが終了しました。今後の手続がスムーズに進めば年内にもドコモがNTTの完全子会社になる見通しです。この所感とですね、一方で、KDDIなどの通信事業者28者が独占回帰に繋がるとして公正競争を確保するためのルール作りを求めております。今後の議論の進め方をどのように考えていますか。
答:TOBの結果については、NTTから報告されるべきものだと思っております。
 また、KDDI、ソフトバンクから提出された意見申出書については、法令に基づいて適切に対処してまいりたいと考えております。

 

KDDIやソフトバンクの意見書を読むと、今後、通信規格5Gや6Gの普及に向け光ファイバー設備が重要になっていくと見られますが、この大部分のシェアを持つNTT東西とドコモが一体となることで他社に不利な競争条件が強いられるのではないかと懸念されていることがわかります。

各社は有識者会議で過去の経緯も踏まえた議論を求めており、総務省の会議設置はこれを受けた対応となっています。

 

またNTTドコモの公表資料によれば、12月25日、クリスマスに上場廃止が予定されています。

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出典:NTTドコモ

NTTグループのみが聖夜のプレゼントを受け取るか、それとも日本の通信会社が活発に競争を行い、消費者も含めた全体が恩恵にあずかれるか、議論の行方に注目ですね。