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【社説】2020年12月29日:官僚の劣化は行政機能を低下させる/夫婦別姓の議論を止めるな

官僚の劣化は行政機能を低下させる

記事本文

www.nikkei.com

要約

行政や政策の質を維持するために、官僚の質向上策を考えなければならない。

感想

政策の企画立案を担う国家公務員総合職、いわゆる官僚と呼ばれる職業の人材不足が深刻化しています。

直近の3年間でも平成30年度の申込者が17428人、令和元年度が15435人、令和2年度が14965人と、採用する分母がどんどんと小さくなっている状況です。

試験の合格者数はほぼ横ばいなので、倍率が下がり質の劣化につながっています。

 

官僚の仕事は激務で給料が安いというイメージがあり、実際東京大学や京都大学などの卒業生の中では、大手企業や外資企業に就職した同級生の方が給料が高いということが往々にしてあるでしょう。

一方で官僚は国民への奉仕者であり、給料は税金から支払われるという観点から監視の目は厳しくなっており、特に幹部公務員は給料をもらいすぎだと批判されることも少なくありません。

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出典:人事院

上の画像は官僚の初任給の一例ですが、人事院はモデルとして下の画像のように、おおまかな年齢や役職に合わせた給与例を示しています。

ちなみに今年は民間企業の給与が下がったことを受け、公務員のボーナスが少し下がりました。

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出典:人事院

www.jinji.go.jp

 

また官僚が離れる原因の一つである長時間労働については、報道によると今月25日の河野大臣の記者会見において、若手職員を中心に時間外労働が多くなっている傾向が明らかにされています。(会見の詳細はHP未掲載でした)

霞が関が魅力のない職場になっているということで、若手官僚の転職が相次いでいます。

 

解決策の一つとして、霞が関と民間を行き来しながらキャリア形成をする「リボルビングドア(回転ドア方式)」の人事システムを導入することが考えられます。

来年9月に創設されるデジタル庁が民間から人材を公募することが話題になっていますが、デジタル社会実現に向けた政府の基本方針には、人材確保策としてリボルビングドアに類似した制度の創設が盛り込まれています。

デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(2020年12月25日閣議決定)

(7)デジタル人材の確保
デジタル庁を含め政府部門においてデジタル改革を牽引していく人材を確保するため、IT スキルに係る民間の評価基準活用により採用を円滑に進める等、優秀な人材が民間、自治体、政府を行き来しながらキャリアを積める環境を整備する

こうした官民の往来が広がれば、成長のために霞が関を離れる優秀な人材が経験を積んだ後、帰ってきて行政にその能力を発揮してもらうこともできるでしょうし、あるいは民間の優秀な人材が官庁で気軽に働くことができれば、行政の仕事に興味を持つ人が増え、ひいては優秀な人材確保につながると思います。

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もちろん天下りのや利害関係者との癒着が起こらないよう、細心の注意を払うことが大前提でしょう。

ですがそのコストを払うだけの恩恵は、きっと行政機関や民間企業、国民にもあるはずです。

デジタル庁を皮切りに、そうした流動性が高まることを期待しています。

 

夫婦別姓の議論を止めるな

記事本文

www.nikkei.com

要約

選択的夫婦別姓制度の実現に向けた動きを前に進めるべきだ。

感想

12月25日のクリスマスの日に、第5次男女共同参画基本計画が閣議決定されました。

菅総理は計画について以下のように述べています。

 男女共同参画はそれ自体が最重要課題ですが、グローバル化が進む中、世界的な人材獲得や投資を巡る競争を通じて日本経済の成長力にも関わります。今が、国民一人一人の幸福を高めるとともに、我が国の経済社会の持続的発展を確保することができるか否かの分岐点である。本計画は、こうした危機感を背景に作成されました。

一方で選択的夫婦別姓制度については計画に盛り込まれず、改革が後退したとの見方もあり、閣議決定当日の会議においても民間議員から意見が出ています。

 第5次基本計画案答申後、与党内の議論の結果、政府案にあった選択的夫婦別姓制導入の文言が削除されたとの報道に接しました。

 1996年民法改正草案要綱の実現と国際水準への接近がさらに遠のいたことを残念に思っております。

 今後の検討継続を強く望むとともに、今後とも積極的な男女共同参画施策の推進をどうぞよろしくお願いいたします。

また会議に参加している福津市副市長からも、夫婦別姓について同様の意見が出されています。

 計画書本文には、「婚姻後も仕事を続ける女性が大半となっていることなどを背景に、婚姻前の氏を引き続き使えないことが婚姻後の生活の支障になっているとの声など国民の間に様々な意見がある。」と記載されていますが、要約版の説明資料からは、パブリックコメントでの意見や第5次基本計画策定専門調査会における議論の紹介が脱落していますし、国会における議論の中身にも触れられていません。

 このままでは、内閣府が実施した「家族の法制に関する世論調査(2017 年)」における選択的夫婦別⽒制度に関する調査結果が、今回の計画になぜ反映されなかったのかが説明できません。

 夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方について、国会において具体的にどのような代案が検討されているのか、また、司法の判断については、何が論点になっているのかなどをわかりやすく説明いただく資料の作成をお願いします。

 

なお、基本計画に先立って11月に公表された「基本的な考え方」には「選択的夫婦別氏制度」という文言が以下のとおり盛り込まれておりましたが、その後の議論で落ちてしまったようです。

第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(2020年11月11日)

③ 婚姻後も仕事を続ける女性が大半となっていることなどを背景に、婚姻前の氏を引き続き使えないことが婚姻後の生活の支障になっているとの声もある。そのような状況も踏まえた上で、家族形態の変化及び生活様式の多様化、国民意識の動向、女子差別撤廃委員会の総括所見等も考慮し、選択的夫婦別氏制度の導入に関し、国会における議論の動向を注視しながら検討を進める。また、女性の再婚禁止に係る制度の在り方等について検討を進める。

議論は20年以上前までさかのぼり、1996年2月の法制審議会の答申で法改正を勧められていますが、現在に至るまで実現していません。

民法の一部を改正する法律案要綱(法制審議会総会決定)
第三 夫婦の氏
一  夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
二  夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

platon.hatenablog.jp

反対派の中には「夫婦の姓が異なると家族としての一体感が失われる」という懸念があるようですが、果たしてそれは説得力がある主張なのか、疑問に思ってしまいます。

個人的には、夫婦が話し合って姓をどうするか決めていくプロセスによってむしろ、家族としての一体感が醸成されるのではないだろうかと考えています。

そんなふうに話し合える相手がいれば、と思う年の瀬です。

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