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【社説】2020年10月14日:非正規に職務に応じた透明な処遇を/国勢調査の電子化も促そう

非正規に職務に応じた透明な処遇を

記事本文

www.nikkei.com

要約

最高裁は非正規従業員に賞与や退職金を支払わないことを容認する判決を出した。

感想

同一労働同一賃金の実現に向けては厚労省のガイドラインに示されているように、労働者派遣法及び大企業におけるパートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日から、中小企業におけるパートタイム法は2021年4月1日から施行されることとなっており、今回の裁判の対象となった事件はどちらも改正法施行前に発生したため、直接には関係していません。

 

ですが、同一労賃については改正前の労働契約法第20条に規定があり、そちらを根拠に争われています。

改正前労働契約法(抄)

第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

長ったらしい条文ですが、要は非正規と正規で労働条件が違うなら、業務内容とか責任とか異動とかその他の事情を考慮しておかしいのはダメよ~ってことです。

 

ここで注意すべきは「その他の事情」という魔法の言葉です。

一応厚労省が出している労働契約法のあらまし(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf)には「その他の事情」の具体例が記載されていますが、もちろん状況によって事情は異なるのでこれにあてはまるかどうかといったことも裁判では争われます。

そして判決が下ったらそれが「判例」となり、同じような裁判が起こった際に過去の判例を根拠にして検事や弁護士が論戦し、裁判官が判決を下していきます。

 

この「その他の事情」について争われた裁判が、2018年6月1日に最高裁判決が出た「長澤運輸事件」です。

www.courts.go.jp

この裁判では定年退職後に再度雇用された嘱託社員に賞与や超勤手当を支給していないことが改正前労働契約法第20条に違反しているのではないかということが争点になりました。

結果としては、超勤手当や精勤手当の不支給は不合理のため支払い命令、一方賞与や住宅手当については正社員と嘱託社員の違いが影響する(=その他の事情にあたる)とされ、不支給は不合理ではないと判断されました。

 

詳しくはこちらの労働法専門の弁護士の方が書いている解説がわかりやすいです。

www.roudoumondai.com

www.roudoumondai.com

終身雇用や年功序列が崩れつつあるなか、こうした裁判の結果のみが世の中を流れ、非正規で働くことが正規で働くことより損だと労働者が考えるようになっては流動性のある労働市場の実現、ひいては欧米型の労働環境は望めないでしょう。

まあ、果たして転職や解雇が容易になり気軽に会社を替えるような社会が今より良いかどうかは、各々の仕事観や人生観、特定の会社の構成員であることをアイデンティティとしているかによってもバラバラになりそうですが。

 

国勢調査の電子化も促そう

記事本文

www.nikkei.com

要約

国勢調査のネット回答率が伸び悩む。

感想

自分も今年の国勢調査はネットで回答しましたが、非常に楽でした。

一方ネット回答を使用しない人の心理を考えてみると、10万円の給付金申請で起こった混乱を想起した人が多かったのではないでしょうか。

給付金は自分もオンラインで申請しましたが、確かに面倒と言えば面倒で、そもそもマイナンバーカード対応のスマホを持っていない場合はシステムが使えず、ソフト面だけでなくハード面での壁があると感じました。

 

あるいは自分からこうした公共サービスに働きかける(例えば水道代の支払いや電気代の支払いなど)ことを言われるまで(督促されるまで)やらないという人も少なくないかと思います。

ゆえに、ネットで国勢調査ができると言っても自分からは回答せず、調査員が督促に来てからやればいいと考えるのでしょう。

 

また国勢調査と聞くと、自分が小学生の頃クラスの友人が「うちの家族は全員アメリカ人ってことにして適当に書いたよ」と話していたことも思い出します。

子どもの言うことなので真偽不明ではありますが、そのまま大人になって親になった際、同じようなことをする可能性があると思います。

 

正確に回答しない要因としては、国勢調査がどのように自分たちの生活に役立つのかわからないということもあるでしょう。

国勢調査の公式HPにはどのように役立っているかが掲載されていますが、そもそも国勢調査に回答しようという人(その中でも自分のような特殊な人)しか見ないと思うので、回答率の向上にどれだけ寄与しているかは疑問です。

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国勢調査の活用事例

せっかくよくまとまっているので、こうしたイラストを国勢調査の回答票を入れた封筒に印刷してはいかがでしょうか。

今の封筒には「重要」「回答の義務あり」といったいかにもお役所的な言葉が躍っているので、これでは面倒だと思われても仕方ないでしょう。

 

根拠に基づいた政策立案、いわゆるEBPM(Evidence-Based-Policy-Making)の観点からも、土台となる基礎統計である国勢調査の正確性が、国民のための政策の有効性担保に必要不可欠だと思います。