デジタル時代の独占とどう向き合うか
記事本文
要約
米司法省が独占禁止法違反でグーグルを訴えた。
感想
今月20日、アメリカの司法省(Department of Justice)は、反トラスト法に違反したとしてグーグルを訴えました。
この文書を読むと、米司法省の他に11の州(アーカンソー州、フロリダ州、ジョージア州、インディアナ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、モンタナ州、南カリフォルニア州、テキサス州)も一緒に訴えを提出していることがわかります。
司法省は過去にも1974年に通信会社AT&T、1998年にマイクロソフトを同様の反トラスト法違反のかどで訴えており、今回も市場に競争力を取り戻しイノベーションの扉を開けると息巻いています。
罪状はいくつかありますが、簡単に説明すると以下の通りです。
- 他の検索サービスのプリインストールを禁じる契約を締結した
- 消費者の意向を無視してグーグルの検索アプリをプリインストールさせ、それをモバイル端末の主要画面に置いて消せないように強制した
- Safariや他の検索ツールに標準的かつ事実上排他的な検索エンジンとして、グーグルの検索エンジンを採用する長期契約をアップルと結んだ
- 独占による利益によって、検索機能を持つあらゆるデバイスやブラウザ等で自社の検索エンジンに優先的な待遇を得て、独占サイクルを継続的かつ強固にしている
翻訳に自信がないので念のため原文も載せておきます。
- Entering into exclusivity agreements that forbid preinstallation of any competing search service.
- Entering into tying and other arrangements that force preinstallation of its search applications in prime locations on mobile devices and make them undeletable, regardless of consumer preference.
- Entering into long-term agreements with Apple that require Google to be the default – and de facto exclusive – general search engine on Apple’s popular Safari browser and other Apple search tools.
- Generally using monopoly profits to buy preferential treatment for its search engine on devices, web browsers, and other search access points, creating a continuous and self-reinforcing cycle of monopolization.
これが事実であれば、確かに自社サービスの利用を強制し他の選択肢を奪うというやり方は、業界にも消費者にもフェアではないでしょう。
自分はこの司法省の訴訟を知った時、検索サービスやブラウザは自分が使いやすいものを選んで使っており、たまたまグーグルのサービスになっただけではと思いましたが、実はそれも他社を排斥した結果生まれた独占によるものかもしれませんね。
むしろスマホに初期アプリやメーカー純正の消せないアプリをプリインストールするのをやめさせ、最初からすべて選べるようにしてみてはと思います。
とは言えそれでは初めてスマホを使う人や、アプリに不慣れな人には不便になってしまうでしょうか。
一方で、今回の訴訟はこうした基本料金無料のビジネスモデルに特有の事象と考えられるかもしれません。
有料サービスの場合、まず利用してもらうハードルを越え、その後リピートしてもらうハードルを越えなければなりません。
しかし基本無料なら最初に利用してもらうハードルは低く(消費者は「別に無料だしとりあえず使ってみるか」と考えるため)、リピートさせる仕組みづくり(=中毒にさせる、同業他社のサービスを使わせない)に注力できるでしょう。
ゆえに、基本料金無料のビジネスモデルは有料サービスよりも、不健全な独占状態を招きやすいという仮説が立てられます。
こうした研究はミクロ経済学の分野になりますので、参考になるレポートを載せておきます。
上記レポートで「Webエコシステム」という言葉を初めて知りましたが、これは記事内に取り上げられている携帯回線業者の通信だけでなく、今回のグーグルをはじめとするプラットフォーマーにも言えるかもしれません。
もしもグーグルが企業分割等の命令を受けサービスの質が低下した場合、グーグルのサービスを用いている企業も打撃を受け、経済に負の乗数効果が生まれてしまうでしょう。
そうした波及効果にも留意しつつ、慎重にIT企業の市場への影響力を分析し、当局はどのように働きかけるかを考えてもらいたいです。
不当な契約や強制はもちろん罰せられるべきですが、一方で最近、GAFAをはじめとする巨大IT企業の独占が問題視されすぎているようにも感じます。
本当に規模の拡大が悪しきものと言えるのでしょうか。
例えば農地であれば散逸している土地や、持ち主不明となっている耕作放棄地を農地中間管理機構が借り受け、農業法人等に貸し付けるなど農業の競争力強化を掲げた集約・大規模化が進められていますが、この考え方の違いは農地とIT企業という産業分野の違いに由来しているのでしょうか。
競争力のある=competitiveなことが良しとされていますが、過度な競争によって生まれる負の外部性(環境破壊など)も考慮する必要があるでしょう。
うまい落としどころを見つけるには、釈迦やアリストテレスの言う「中庸」を目指すのが良いのかもしれませんね。
昨今「日本ではGAFAのような企業がなぜ生まれないか」「日本からユニコーン企業が誕生しない理由」といったキャッチーなコピーを目にする機会が増えましたが、そうした巨大IT企業が日本で誕生した際に、産業の健全な成長を促すためにどのような規制をかけるべきか、また撤廃すべきかあらかじめ考えておく必要があるでしょう。
そのために、今回のアメリカの例はライブ感のある教訓として、日本も注目すべきだと思います。
いじめ対策、法令順守徹底を
記事本文
要約
いじめ対策として子どもと大人の両方が法律を守る意識を持つべき。
感想
文科省のHPでいじめに関する統計をチェックしようとしたところ、e-stat(政府の統計窓口)で昨日更新されていたことがわかりました。
いくつか統計を見ていたところ、気になるデータが見つかりました。
下の図はいじめ発見のきっかけを割合で示したグラフですが、他の子ども(いじめを周りで見たり、噂を聞いた子ども)が情報提供する割合が3%~5%と非常に少ないことに驚きました。
自分が考えている以上に、傍観者という立場を抜け出すのは子どもたちにとってハードルが高いのかもしれません。
さらにこの傾向は小学校、中学校、高校と年次が上がってもあまり変化が見られないことから、学校を卒業して大人になっても同様の傾向があると予測できます。
学校よりは発生率が少なくなるとは思いますが、会社等のコミュニティでいじめが行われている際も、周囲の人が情報提供するというのは稀なのかもしれません。
またいじめの主な内容に関する分類と割合は以下の通りです。
- 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる。(61.9%)
- 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。(21.4%)
- 仲間はずれ、集団による無視をされる。(13.7%)
- 嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。(8.2%)
- 金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。(5.5%)
- パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる。(2.9%)
上記の割合は小中高合計ですが、それぞれ別で見ると新たな傾向が読み取れます。
上図の右端グラフから、パソコンやスマホによる誹謗中傷の書き込みは年次が上がるとともに増加していることがわかります。
この増加傾向が続くと考えると、大人になって起こるいじめはネットを介したものが主流になると推測できます。
前述の「いじめ発見のきっかけ」と併せて考えると、大人になってのいじめは主にネット上の書き込みや誹謗中傷であり、それを見ている人が声を上げることは少ないという仮説を立てることができ、現実と照らし合わせて考えてみても納得感があるのではないでしょうか。
昨今SNSやネット掲示板上での誹謗中傷が問題視され、法的措置に出る被害者も目立つようになっていることから、こうしたいじめに対する法令順守の意識は子どもと「それを見守る立場としての」大人だけではなく、「いじめの渦中にいる立場としての」大人にも必要でしょう。