企業は構造変化を先取りし収益力向上を
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要約
最悪期は脱しつつあるなか、企業が変革努力を続けていくことが景気回復につながるだろう。
感想
コロナの影響で今年4~6月期は上場企業全体で前年同期比約6割の減益でしたが、7~9月期の減益幅は約4割と、持ち直しの動きがみられつつあります。
ゲームやEC(電子商取引)をはじめとするIT企業は巣ごもり需要をとらえ収益を伸ばしていますが、航空や鉄道などは苦境が続いています。
業績回復する企業とそうでない企業が二極化する、K字型の景気回復シナリオとなる可能性が高まっているようです。
奇しくも、トヨタなどの製造業は中国向けの販売が伸びており、世界が経済活動の再開をしづらいなかで立ち直りの早い中国経済に頼るような状況でもあります。
先日も中国で11月11日の「独身の日」(1が並んでいるため)にちなんだネットセールが行われ、日本企業も美容関連商品や化粧品を中心に、大きな利益を出していました。
一方、中国政府も大きすぎるネット企業に対し監視の目を光らせています。
先日、アリペイの運営会社であるアントグループが上場延期を強いられたことは記憶に新しいですね。
規制当局は独身の日に多額の利益を出したアリババなど、プラットフォーマーと呼ばれるIT企業に対する独占禁止法の草案を今月10日に公表し、パブリックコメントを受け付けています。
中国政府のサイトを探したところ、以下のページがパブコメ募集の文面となっており、一番下から独禁法の草案をワードファイルでダウンロードできました。
ちなみに意見を出すには、登録が必要そうでした。
もちろん中国語は読めないので、ワードの機能で翻訳してもらい読んでみました。
基本原則として、以下のようなことが掲げられています。
競争の排除と制限の独占行為を防止し、抑制し、プラットフォーム経済における公正な競争を維持し、オープンで包括的な開発環境を維持し、市場参入障壁を低減し、より多くの主体の市場参入を促進し、公正かつ秩序ある競争に参加し、市場のダイナミズムを刺激するよう努力する。
全体に渡って、市場を支配する強大なプラットフォーマーが不当な契約を強要したり、消費者や事業者に不利益を押し付けることを制限する内容となっています。
政治的には一党独裁体制の中国ですが、経済においては先進国の事例を積極的に取り入れ、政治の力を持って市場経済の公正化をしているのが面白いなと思いました。
アメリカでも先月、不当な契約を強いるなどの行為が反トラスト法(独占禁止法)に抵触するとして、司法当局がGoogleを訴えました。
プラットフォーマーと呼ばれる企業が大きくなっている昨今の状況にあって、日本ではGAFAやアリババのような企業が市場を支配する様子はみられません。
好意的に解釈すれば、独占禁止法がしっかりと働いており、健全な競争市場が維持されていると見ることもできるでしょうか。
「なぜ日本でGAFAのような企業が生まれないのか」という考え方ではなく、「GAFAが生まれないことを活かす戦略」を立てることが、業績の回復、ひいては独占を嫌う昨今の国際経済をリードすることにつながるのではないでしょうか。
経営者の覚悟問う地銀支援
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要約
政府と日銀は地銀の統合や経費削減を支援し、経営改革を促す。
感想
日銀は今月10日、「地域金融強化のための特別当座預金制度」の導入について発表し、地銀や信金といった地域金融機関を支援する政策を打ち出しました。
内容としては以下の通りです。
3年間(2020~22 年度)の時限措置として、一定の要件を満たした地域金融機関に対し当座預金への追加的な付利を行うもの
要件を満たした金融機関が日銀に預ける当座預金の金利を0.1%上げることになり、もしも全ての地銀・信金がこの制度の対象に認められれば、年間で約400~500億円が日銀から地域金融機関に流れるものと見込まれています。
かねてより菅総理は「地銀は多すぎる」といった再編を示唆するような発言をしており、収益が減少しつつある地銀に対し、統合を含めた大胆な経営計画を求めています。
2020年3月末時点での地方銀行数は、以下の64行でした。
なお、今年10月1日に長崎の十八銀行と親和銀行が合併して「十八親和銀行」となったことに伴い、現在は63行となっています。
同様に支援制度の対象となっている信用金庫の数は、全国で254庫及び信用中央金庫を合わせた255庫となっています。
偶然ですが、2進数で「11111111」庫と表せるのがなんかいいですね。
信用金庫は「相互扶助」の理念を持った非営利法人なので、一概に地銀と信金を一まとめにして語るのは難しいですが、地域の持続的な発展のための金融インフラとして、金融機関自身の経営悪化によりお金の流れが止まってしまうことは防がなければなりません。
「経営統合」というのは確かに高いボールですが、それを見せた後に"ドラスティックな"「経費削減」を迫る、というのが政府と日銀の戦略のように思います。