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【社説】2020年12月20日:効果を高める防衛へ重点を問い直せ/「アラブの春」が残した混迷

効果を高める防衛へ重点を問い直せ

記事本文

www.nikkei.com

要約

防衛力を高める取り組みとともに、専守防衛の論理も議論を深めたい。

感想

今月18日、政府はミサイル防衛システム等の方針を定める「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について」を閣議決定しました。

ミサイルから日本を守る手法については、2017年以来陸上配備型の迎撃システムであるイージス・アショアの開発を検討していました。

 

しかし今年6月、迎撃システム打ち上げ時のブースター(三段ロケットの後方部分のようなもの)が住宅地などに落ちないようにするためには、ソフトウェアやハードウェアの大規模改修が必要であるということが判明したために、計画を断念しました

詳しい経緯については、防衛省がその後9月に公表した「イージス・アショアに係る経緯について」に書かれています。

 

イージス・アショアの配備への道のりの中には、住民への説明会中に職員が居眠りをしたり、付近の標高を誤って計測していたなどで批判を受けていました。

関係者に不幸が襲い掛かる(自業自得ですが)ということで、防衛省の中では「呪われたプロジェクト」と呼ばれていたかもしれませんね。

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地上配備を断念した防衛省は代わりの迎撃システムを考え、この度海上にイージス艦を配備するという策を打ち出した、という流れになります。

閣議決定をした18日には、岸防衛大臣が記者会見を開いており、質疑応答をしています。

岸防衛大臣閣議後記者会見(2020年12月18日)(抄)

Q:新たなミサイル阻止の方針、それからイージス・システム搭載艦2隻の整備、これを閣議決定の意味合い、受け止めを大臣からお願いします。

A:これ振り返ってみますと、本年6月にイージス・アショアの配備プロセスの停止して以降ですね、私が大臣に就任し、そして移動式の洋上プラットフォームに搭載する方向で検討を進めるという方針について確認をしたところでありました。そのもとで、中間報告、また米側や米側から得た情報を踏まえて、イージス・アショアの構成品を洋上プラットフォームに搭載することに関する技術的実現性、また、導入コスト、規模感等々を確認することができました。そういった検討を着実に重ね、本日、「あるべき方策」として、イージス・システムの搭載艦2隻を整備すること。同艦は海上自衛隊が保持すること。また同艦に付加する機能、設計上の工夫等を含む詳細について、引き続き検討を実施し、必要な措置を講ずること、こういうことでございますが、我々として今般の閣議決定を基にですね、イージス・システム搭載艦に係る運用構想の詳細、搭載機能、艦の設計、要員確保等について、引き続き米政府、また日米の民間事業者を交えて、鋭意検討を進めてまいりたいと思います。

Q:スタンド・オフ・ミサイルについてなんですが、島しょ部へ進行する艦艇が想定されていると。沖縄県尖閣諸島含む南西諸島の海域では、自衛隊機が使える飛行場が少なくてですね、防空態勢の空白になっている指摘もあります。南西諸島地域を巡る安全保障環境についての現状の認識と、そしてこの安保環境を踏まえたスタンド・オフの意義を詳しくお聞かせください。現状認識と、このスタンド・オフの意義。

A:南西諸島の現状ですけれども、まず、安全保障環境は非常に南西諸島について、非常に厳しい。中国による艦艇の活動等ですね、非常に活発化をしているというところでございます。それに対してわが国としてしっかり適切な対応をしていかなければいけないということでありますが、そういった緊迫した状況において、隊員の安全を図りながら相手を攻撃することができるスタンド・オフ・ミサイル、これを持っていくということが必要、この南西地域の島嶼防衛のために必要な装備であると、こういうふうに考えているところから、進めてきたところであります。

Q:もう一点なのですけれども、ミサイル防衛文書に関連して、敵基地攻撃については明記を見送る一方ですね、スタンド・オフ・ミサイルの開発が盛り込まれました。敵基地への政治判断を明確にしないまま転用可能なミサイル開発を進めていると、議論を回避しているのではないかという批判もありますが、この批判に対してはどのように受け止められますか。

A:スタンド・オフ・ミサイルと、いわゆるミサイル阻止の方策、これは区別して考える必要があると思います。ミサイル阻止につきましては、引き続き政府内でしっかり検討を続けてまいるということでございます。

Q:関連して、現行の北朝鮮のミサイル開発状況と、それに対して今回のミサイル防衛のイージス搭載艦2隻の整備について、これの評価・意義について教えてください。

A:北朝鮮の状況はですね、彼らは非常に技術を積み重ねてきて、これまでにない、見られないようなミサイルを開発している。先般の記念日の時かな、新たなICBM等々、あと、こうしたロフテッド・ミサイル等々ですね、実際に実験を繰り返してきていて、そういう意味で北朝鮮によるミサイルのわが国に対する脅威というものは高まっている。そういう中で、わが国はしっかりしたミサイル防衛体制をとっていかなければいけないという中で、このイージス・アショア自体は配備の停止をしたわけですけれども、その代替案をしっかり検討を重ねてきた、それが一つ前に、2隻のイージス・システム搭載艦を配備するということで、今回決定をしたわけです。今後状況をしっかり見ながら、どういった装備を載せていくか、運用をどうしていくか、こうしたことについて、しっかり検討をしていくということであります。


ところで、防衛システムに名づけられた「イージス」はオリュンポス十二神の主神ゼウス、もしくはその娘のアテナが持つ「アイギスの盾」に由来しています。

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ダヴィッド「アレスとアテナの戦い」

神話上のアテナは陸で戦っている描写が多かったため、海上でも女神の加護にあやかれるかが気になるところですね。

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現代版アテナの一例

 

「アラブの春」が残した混迷

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www.nikkei.com

要約

アラブの春から続く内戦を解決するために、日本を含む国際社会が行動すべきだ。

感想

今から10年前、2010年の12月にチュニジアに端を発した民主化運動「アラブの春」は、周辺国へ波及して多くのシリア難民を生み出すなどして、混迷は今も続いています。

リビアのカダフィ大佐やエジプトのムバラク政権など、聞き覚えがある人も多いのではないでしょうか。

革命後もIS(イスラム国)などの台頭や、原油価格の低迷などで経済が低迷しており、当初の理想は達成できていません。

www.mofa.go.jp

 

独裁政権を打倒した後に政治情勢が混迷するという流れは、フランス革命を思い出しますね。

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当時のフランスでは革命後もテルミドール9日のクーデターでロベスピエールを処刑、ブリュメール18日のクーデターでナポレオンが登場し、大規模な戦争でヨーロッパは混乱しました。

その後もドイツでヒトラー、イタリアでムッソリーニといった独裁者が誕生して世界大戦が起こり、戦後ヨーロッパは歴史の反省からEUを組織しました。

 

イスラーム世界にはスンナ派とシーア派がいるように、一概にまとまることはヨーロッパ以上に難しいかとは思いますが、「アラブの春」を契機に、多国間のまとまりを提唱するような民主活動家が現れることに期待しています。

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