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【社説】2020年11月12日:オンライン診療解禁の後退を危惧する/税の無駄遣いを繰り返すな

オンライン診療解禁の後退を危惧する

記事本文

www.nikkei.com

要約

オンライン診療の解禁が骨抜きの改革にならないよう総理の指導力が問われる。

感想

田村厚労大臣は、10月30日の記者会見で以下の通り発言し、オンライン診療は初診からOK、ただしかかりつけ医が対象ということで河野大臣・平井大臣と合意したと発表しました。

2020年10月30日 田村厚労大臣閣議後会見(抄)

・・・オンライン診療でありますけれど、これは安全性と信頼性というものをベースにですが、初診も含めて進めるということで、総理の方からは恒久化というお言葉もいただいております。どういうものを対象にするかということで、いわゆるかかりつけ医、普段からかかっているお医者さんという意味合いなんですけれども、いわゆるかかりつけ医というところを対象にする。これは初診も解禁といいますか恒久化をしていくというようなことを三者で合意いたしました。

また、大臣発言を受けた記者からの質問にも答えています。

記者:オンライン診療のかかりつけ医というのは、具体的にはどういうものを指すのでしょうか。
大臣:先ほども申し上げましたが、いわゆるというのは、かかりつけ医という概念がなかなかはっきりしない部分もございます。
 どういうものかというとイメージ的には先ほど言いました、いつもかかっている医師といいますかそういうようなイメージですが、具体的に制度化するためにはある程度固めていかなければなりませんので、それはこれから厚生労働省でいろいろな方々のご意見を聞かせていただきながら固めてまいりたいと思います。

記者:オンライン診療ですが、かかりつけ医をもっていない人たち、普段病院にかかっていない人たちについては、基本的には初診からのオンライン診療は認めないという方針ということでしょうか
大臣:世界中を見ましても、アメリカもメディケア、要するに公的医療ですね。そういう中ではやはりそのようになっています。イギリスも同じような、フランスも同じですかね。
 診たことがある人という話であって、そこはやはり先ほども言いましたが、安全性だとか信頼性という意味からすると、世界の先進国は診ていただいたことのある診療経験のあるお医者さんという形になっていますので、全く何も基礎知識もない中でやるというのはなかなかハードルの高いのではないかというような三大臣の合意であったと私はそのように認識しております。

また三大臣の会合に先立ち、上記会見の3日前に大臣はオンライン診療についての質問に答えています。

2020年10月27日 田村厚労大臣閣議後会見(抄)

記者:オンライン診療について伺います。厚労省はこれまで医師法の解釈を示した平成9年の厚労省通知、いわゆる遠隔診療に関する通知ですが、診療は医師と患者が直接対面して行われることが基本であるという、いわゆる対面原則を示していました
 現在オンライン診療の恒久化の検討を進める中で、先日の河野大臣、平井大臣との合意というものは、診療の対面原則の廃止を意味すると考えてよろしいのかどうかを伺います。
大臣:(略)いずれにしても、申し上げたとおりかなりの範囲でできるように我々としては初診のオンライン診療を含めてこれから三大臣で詰めていくということです。


オンライン診療については規制改革推進会議の作業部会で議論されています。

10月21日に開かれた会合で、オンライン医療サービス「curon」を提供する民間会社「MICIN」が「オンライン医療の課題は費用」と問題提起しました。

 

どういうことかと言うと、オンライン診療では診療報酬が低く見積もられ、その分患者の支払う料金が増えているということです。

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出典:内閣府

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出典:内閣府

一方で、オンライン診療の利用者の約8割が以前受診した医療機関で診てもらっているというデータも示されています。

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出典:内閣府

かかりつけ医については、日本医師会が「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しています。

が、あまりにも万能すぎるようにも思えます。

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出典:日本医師会

そもそも国民全員がかかりつけ医を持った場合、日医総研の調査によると人口1000人当たりの医師数が2.4人のため、医師1人あたり約417人の患者を診ることになってしまい、現実的とは言えないのではないでしょうか。

 

もしかすると、厚労省も改革を進めたいものの、オンライン診療に抵抗する医師会との折り合いをつけるために、初診はかかりつけ医とすることでかかりつけ医を奨励する医師会の機嫌をとっているのかもしれません。

 

だとするならば、解決策としてはそもそもの「かかりつけ医」をネットで医師に相談できるサイト(例:AskDoctors)で見つけられるようにすることが考えられます。

最初の相談は無料とし、詳しい症状や対処法の質問をしたり、オンライン診療に切り替えて薬を出してもらったりする場合に初めてお金を支払うという仕組みにすれば、初診の一歩手前の「相談」からかかりつけ医を見つけての「初診」まで対面することなく完結するでしょう。

 

他にもオンラインで処方箋を出す手続きが複雑という問題もあるそうで、制度上のハードルは多いように見えますが、頭をひねれば策は見つかると思います。

医療のデジタル化を推し進めるため、知恵を絞っていきましょう。

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税の無駄遣いを繰り返すな

記事本文

www.nikkei.com

要約

行政の無駄な支出が繰り返されぬよう対策を講じるべきだ。

感想

会計検査院は11月10日、菅総理に昨年度決算の検査報告を提出しました。

www.jbaudit.go.jp

ちなみに会計検査院の役割については、憲法で定められています。

日本国憲法(抄)

〔会計検査〕

第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

今回会計検査院が「むむ?」と指摘した金額は約297億円にのぼります。

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出典:会計検査院

過去10年間で最少額とかなり指摘が少なくなっていますが、会計検査院の報告書にも書かれているように、コロナ禍で検査が行き届かなかった部分もあるでしょう。

なお、2年次においては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止への対応等として、2年4月及び5月は全ての実地検査を中止し、6月以降についても同感染症による検査対象機関への影響等に配慮しつつ、検査対象機関等を一部に限定するなどして実施した。

ただ、どれくらい検査体制が縮小しているのか憶測で語るのもナンセンスですから、定量的な分析を試みてみましょうか。

 

使えそうなデータとしては、実地検査に要した人日数(人数×日数で工数を表す単位)が検査資料に毎年掲載されているので、これをグラフにしてみました。

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会計検査院HPより筆者作成

今回の検査にかけられた工数が少ないことが一目瞭然ですね。例年の約半分ほどになっています。

もちろん検査能力の向上や効率化による工数の減少もあるでしょうが、それを加味しても大幅な減少幅と言えるでしょう。

 

では、前述の指摘金額の規模と突き合わせてみるとどうなるでしょうか。

指摘金額/人日数(単位は億円)で比較すると、以下の通りです。

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会計検査院HPより筆者作成

こう見ると、今回も近年とあまり変わらないか、むしろ減っているように見えます。

もし今年も例年同様に会計検査が行われていたならば、指摘金額は例年と同じくらいか少し減少していたと考えられるのではないでしょうか。

 

もちろん、税金の無駄遣いは称賛されるものではありませんから、ゼロに近づけていくことが求められます。

今年は大規模な補正予算を計上しているので、来年の検査で過去最高の指摘金額にならないよう祈っています。