platonのブログ

思考の整理とアウトプット、たまにグラブル

【社説】2020年11月1日:75歳以上は窓口負担原則2割を明記せよ/米経済の着実な回復を望む

75歳以上は窓口負担原則2割を明記せよ

記事本文

www.nikkei.com

要約

政府は後期高齢者の医療費窓口負担を原則2割とすべきだ。

感想

全世代型社会保障検討会議が12月にまとめる最終報告に向けた議論を再開しました。

日経新聞は経済界の意向を重視する側面もあるのか、昨年からこの2割負担を唱え続けています。

www.nikkei.com

 

政府は今年6月25日に第2次中間報告を公表しており、医療費の窓口負担については以下の通り、昨年の中間報告に沿って検討を進めるとしています。

2020年6月25日 全世代型社会保障検討会議 第2次中間報告(抄)

第2章 昨年末以降の検討結果

4.医療
昨年12月の中間報告で示された方向性や進め方に沿って、更に検討を進め、本年末の最終報告において取りまとめる

 

昨年の中間報告を読むと、以下のように書かれています。

2019年12月19日 全世代型社会保障検討会議 中間報告(抄)

第2章 各分野の具体的方向性

3.医療

(2)大きなリスクをしっかり支えられる公的保険制度の在り方
後期高齢者の自己負担割合の在り方

 (前略)具体的には、以下の方向性に基づき、全世代型社会保障検討会議において最終報告に向けて検討を進める。同時に、社会保障審議会においても検討を開始する。遅くとも団塊の世代が75歳以上の高齢者入りする2022年度初までに改革を実施できるよう、最終報告を取りまとめた上で、同審議会の審議を経て、来年夏までに成案を得て、速やかに必要な法制上の措置を講ずる。
後期高齢者(75 歳以上。現役並み所得者は除く)であっても一定所得以上の方については、その医療費の窓口負担割合を2割とし、それ以外の方については1割とする。
・ その際、高齢者の疾病、生活状況等の実態を踏まえて、具体的な施行時期、2割負担の具体的な所得基準とともに、長期にわたり頻繁に受診が必要な患者の高齢者の生活等に与える影響を見極め適切な配慮について、検討を行う。

 

また、10月8日に財務省の会議でも社会保障費が財政を圧迫しているという文脈で、2割負担の拡充が提言されています。

財政制度分科会 資料(社会保障について①)より

全世代型社会保障への転換を図るからには、現在9割給付(1割負担)とされている後期高齢者について、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担を導入するとともに(高齢者の医療の確保に関する法律の改正)、遅くとも団塊の世代が75歳以上の高齢者入りする2022年度初までに改革を実施できるよう、施行時期を定めるべき。

www.mof.go.jp

 

一方、日本医師会は医療費の負担増に懸念を示しており、10月28日の会見で中川会長が以下の通り意見を表明しています。

後期高齢者は1人当たり医療費が高く、年収に対する患者の一部負担割合が「十分に高い」として、「受診控えの恐れがある」と牽制した。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で受診控えが起きるなかで、「さらなる受診控えを生じさせかねない政策をとり、高齢者に追い打ちをかけるべきではない」と強調した。

「(前略)日本医師会としては、公的医療保険制度は色々な工夫で維持できると思っている」との考えも表明。日医として、改革案を提言する姿勢も鮮明にした。

www.mixonline.jp

 

なるほどと思う反面、人は老いる生き物ですから、高齢者の医療費が高額になるのは当たり前のようにも感じます。

これについては、前述した財務省の資料に反駁の根拠となりうるようなデータがありました。

f:id:Platon:20201101100124p:plain

出典:財務省

 

この数値を見ると、高齢者の医療費は確かに増加していることがわかります。

しかし、その医療費の増加よりも大きい割合で国庫負担が増加していることが読み取れます。

65歳から74歳までは医療費と国庫負担の増加割合がほぼ同じ(約3倍)ですが、75歳以上の後期高齢者から国の財政への圧迫度合いが強まっている(1.7倍と4倍)ことがわかります。

 

そもそも現在の後期高齢者医療制度は、それまでの老人保健制度を改め、改正健康保険法が施行された平成20年4月から始まった制度です。

元々国民皆保険を維持していく目的のためにつくられたものですから、その理念に立ち返り、社会保障の破綻を防ぐためにも、安易な世代間、業界間の対立構造にするのではなく、一致団結してより良い仕組みづくりに取り組むべきでしょう。

 

と、ここで筆を置こうとしたところ、財務省の資料に気になる記述を見つけました。

f:id:Platon:20201101103125p:plain

出典:財務省

f:id:Platon:20201101103138p:plain

出典:財務省

なんと、運動や食事をはじめとする健康づくりによる予防医療は、コストを上回る効果を上げていない、むしろ医療費を増加させているとする研究もあるそうです。

最近ダイエットをしている自分には刺さりました。

 

とはいえ、健康になることそれ自体は間違いなく良いことです。

財務省も資料の中で「予防・健康づくりは個々人のQOL(Quality of Life)の向上という大きな価値をもたらすものであり、エビデンスに基づくKPIの設定や費用対効果の検証を前提として、今後も推進すべきであることは変わらない」と述べています。

 

ソクラテスが「饗宴」の中で語っていた「愛の奥義へ至る道は、美しい肉体、美しい職業活動、そして美しい学問から美の本質を認識する梯子を上るようなもの」という言葉にならい、まずは美しい肉体、すなわち健康な身体を手にすることから歩みを進めていこうと思います。

f:id:Platon:20201101105424p:plain

美しい肉体のイメージ

 

米経済の着実な回復を望む

記事本文

www.nikkei.com

要約

米国経済は回復基調にあるが、依然として懸念はぬぐえない。

感想

第三四半期(7月~9月)のアメリカの実質国内総生産が、前期比33.1%増加し、政権からは経済回復をアピールする声も上がっています。

ですがグラフからもわかるように、その前(4月~6月)の落ち込み(33.2%減)による反動にすぎません。

f:id:Platon:20201101111156p:plain

出典:アメリカ経済分析局

ちなみに日本は4月~6月の落ち込みが28.1%でした。

 

日本政府が第三四半期GDPを公表するのは11月16日ですが、民間エコノミストの予測によると、7月~9月の実質GDPは前期比18.3%の増加にとどまる見込みのようです。

www.nikkei.com

アメリカ同様グラフにするとこんな感じです。

f:id:Platon:20201101113007p:plain

内閣府データより筆者作成※2020年7-9月期は民間予測

アメリカもそうですが、急激な落ち込みの反動により回復する見込みではあるものの、コロナ以前の経済水準には戻っていません。

日本経済の回復時期は2023年~24年頃になると見るエコノミストも多いそうです。

 

またアメリカでは景気が回復しつつあるものの、「V字型」ではなく「K字型」になる懸念が示されています。

f:id:Platon:20201101113948p:plain

コロナ禍を機に変化した日常に合わせたサービスを提供できる企業は景気回復の波に乗れるものの、そうでない業界は置き去りになってしまうというシナリオです。

 

もちろん企業の新陳代謝や市場競争、業態の転換といった自助努力が求められるという主張も一理ありますが、今回の危機はそうした進化のスピードをはるかに超えるものだと思います。

様々な政策や知恵を総動員して、一丸となってK点越えの大ジャンプを見せてほしいものです。

f:id:Platon:20201101120404p:plain