押印廃止を弱点克服の好機に変えよう
記事本文
要約
押印廃止を政府、企業ともに推進し経済成長のチャンスとすべきだ。
感想
菅総理は、今月7日に官邸で行われた「規制改革推進会議 議長・座長会合」において、デジタル時代に向け、押印廃止をはじめとする指示を関係省庁に出しました。
この会議で、総理は以下のように発言しています。
2020年10月7日 規制改革推進会議 議長・座長会合 菅総理発言(抄)
(前略)新型コロナウイルスや規制のデジタル化への対応、地方を含めた経済活性化、いずれも重要な課題であると思っています。特に、オンライン診療・服薬指導、オンライン教育は、デジタル時代において最大限その活用を図るべきものだと思います。デジタルの持つ可能性を十分に発揮し、改革を進めていただきたいと思います。
また、行政手続では、書面・押印・対面主義の見直しを抜本的に進めています。既に、押印は原則廃止の方針を河野大臣が表明いたしました。その方針を前提として、近日中に、全省庁において全ての行政手続の見直し方針、このことをまとめていただきたいと思っています。加えて、民間同士の手続のデジタル化を進めるに当たって、例えば、取引の際に書面の交付義務、資格を持つ者の常駐義務など、規制がデジタル化を阻むことのないよう、抜本的な見直し、ここも進めていきたいと思います。さらに、規制改革・行政改革ホットラインに寄せられた国民からの提案によく耳を傾けて、できるものから、すぐに改革につなげていきたい、このように思います。
また、行政の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進めるために、各省庁が自ら規制改革を進めることが必要であると思います。河野大臣を中心に、デジタル改革担当大臣、また規制や制度を所管する関係大臣は、よく連携して大胆な規制改革を進めていただくようにお願いしたい、このように思います。(後略)
また規制改革推進会議のHPには、この日の資料が掲載されています。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/coremeeting/20201007/201007coremeeting01.pdf
この資料に押印廃止に向けた具体的なスケジュールが以下の通り記載されていました。
規制改革推進会議 当面の審議事項について(2020年10月7日)(抄)
2.新型コロナウイルス感染症拡大防止及び新たな生活様式に向けた規制改革
(1)書面規制、押印、対面規制の見直し
①行政手続における書面規制・押印、対面規制の抜本的な見直し
・全ての行政手続を対象として、書面・押印・対面の必要性を厳しく検証し、年内に省令・告示等の改正、年明けに一連の法改正を行う。
②民間における書面規制・押印、対面規制の見直し
・民間事業者間の手続についても、法令で書面・押印・対面を求めている規制の必要性を検証し、見直しを行う。
スケジュール感としては、年内に省令・告示等の改正を行い、年明け(おそらく通常国会)にまとめて法改正を行うと見込まれます。
その際、関連する法令が多岐に渡り所管省庁もバラバラでしょうから、まず省令や告示改正は各省庁で行い、その間に法改正チームを立ち上げて改正が必要な法律を洗い出し、一括改正法を取りまとめて年明けに国会へ提出、予算審議が終わる4月以降から内閣委員会あたりで審議開始といった流れになるのではないかと思います。
省令改正の際は国民から広く意見を募集する「パブリックコメント」という手続きが行われるはずなので、募集が開始されたら普段行政手続き(役所で申請をするようなこと)をしている方は、意見を出してみるのもいいでしょう。
また法律の改正日と、実際に改正後の法律が効力を発揮する施行日は期間が空くことがしばしばありますが、総理や河野大臣のエネルギーを見るに、改正したらその日から施行開始するようプッシュしていくと予想されます。
押印廃止そのものだけではなく、施行日をめぐっても、各省庁とバトルが行われる気がしますね。
ところで、最近とかく悪者にされがちな印鑑ですが、私たちが印鑑と聞いて真っ先に思い出されるのはやはり「金印」、その中でも国宝とされている「漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)」ではないでしょうか。
現在は福岡市博物館で展示されているこの金印ですが、発見されたのは江戸時代、博多湾に浮かぶ志賀島で農作業中に偶然見つかったそうです。
また漢委奴国王印の他に、「魏志倭人伝」によると邪馬台国の女王卑弥呼にも、魏の都に貢ぎ物を贈ったお礼として金印が授けられたそうです。
卑弥呼は「親魏倭王」と称されたそうなので、もしかすると日本のどこかにまだ「親魏倭王の金印」が眠っているかもしれません。
押印廃止に向けて時代が変わりつつありますが、数千年後には「これが日本で使われた最後の印鑑」といった形で、私たちがいま使っている印鑑が歴史のロマンの一部になる日が来るかもしれません。
そんな未来に思いを馳せつつ、この一押しが歴史上の変わり目かもしれないと考えながらハンコを押してみてはいかがでしょうか。
外国人に変革託す三菱ケミ
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要約
外国人をトップに据えた三菱ケミカルは平時の改革を実行できるか。
感想
平成26年の会社法改正により、コーポレートガバナンス強化のため「指名委員会等設置会社」という制度が創設され、平成27年から三菱ケミカルもこの会社形態に移行しています。
「指名委員会等設置会社」には、指名委員会の他にも経営陣の個人別報酬を決める「報酬委員会」と経営陣・会計参与の職務執行をチェックする「監査委員会」があります。
これら3つの委員会を構成する委員の過半数は社外取締役でなければいけません。
今回のトップ人事を主導したのがこの「指名委員会」ですが、このメンバーは社外取締役である橋本孝之氏を委員長に据え、委員は3名の社外取締役(國井秀子氏、程近智氏、菊池きよみ氏)及び1名の社内取締役(小林喜光取締役会長)で構成されています。
三菱ケミカルは多様性のために2014年から外国人取締役、2015年から女性取締役をそれぞれ役員に選任しており、コーポレートガバナンス向上に意欲的な企業の一つです。
新社長となるジョンマーク・ギルソン氏はベルギー出身で、現在フランスのロケット社CEOを務めています。
フランス語は読めませんが、幸いロケット社がグローバル企業だったので、英語版の公式サイトもありました。
ざっと見た感じ、化学を基礎としたバイオ医薬品、化粧品や健康食品を手掛けているようです。
その点は、三菱ケミカルの事業領域と重なる部分が大きいですね。
新社長のギルソン氏の略歴を探したのですが、私の英語力が乏しく発見に至らなかったため、公式HPの顔写真を貼っておきます。
さすが、公式サイトの写真はきれいに撮れていますね。
三菱ケミカルのHPに掲載されている経営陣の写真はみなシャツとジャケット、ネクタイをきっちり締めていますが、ロケット社の経営陣の写真はギルソン氏をはじめとして、シャツは着ているものの全体的にラフな印象を受けます。
このあたりも改革対象になるか、気になりますね。
また面白いことに、三菱ケミカルの取締役会長である小林喜光氏は、現在菅政権の一丁目一番地である「規制改革」を主導する規制改革推進会議の議長も務めています。
日本全体の改革を行いつつ、自らの企業も改革していこうという考えでしょうか。
政府が進める規制改革と三菱ケミカルが進める経営改革、どちらも目が離せません。