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【社説】2020年10月28日:核廃絶へオブザーバー参加視野に貢献を/司法が米大統領を決めるのか

核廃絶へオブザーバー参加視野に貢献を

記事本文

www.nikkei.com

要約

核兵器禁止条約の運用に、日本もオブザーバー参加で貢献してはどうか。

感想

2017年に国連軍縮部(UNODA:United Nations Office for Disarmament Affairs)で採択された核兵器禁止条約(TPNW:Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)に今月24日、ホンジュラスが批准したことで発効要件となっている50か国の批准が達成されました。

50か国の批准後90日後に発効すると条文で定められているので、2021年1月22日から効力を持ちます。

 

実際に読んでみようと公式サイトを確認したところ、原文は英語の他にもアラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語で書かれていますが、残念ながら日本語はありませんでした。

disarmament.un.org

仕方ないのでGoogle翻訳を駆使して格闘し何とか読んだ後、朝日新聞HPに日本語の全文が載っているのに気が付きました。

www.asahi.com

その中で、個人的に気になる条文をいくつか紹介します。

 

 第1条(禁止項目)

一、締約国はいかなる状況においても次のことを実施しない。

(d)核兵器もしくはその他の核爆発装置の使用、あるいは使用をちらつかせての威嚇

Article 1
Prohibitions
1. Each State Party undertakes never under any circumstances to:

(d) Use or threaten to use nuclear weapons or other nuclear explosive devices;

これは抑止力としての核兵器を否定するものでしょう。

戦争を起こさないために、また外交でやられっぱなしにならないために核兵器を持つ、あるいは核兵器所持国に守ってもらうという考え方に対し、一石を投じるものです。

 

第6条(被害者支援と環境改善)

 一、締約各国は、自国の管轄下で核兵器の使用や実験によって悪影響を受けた者について、適用可能な国際人道法および国際人権法に従って、医療やリハビリテーション、心理療法を含め、差別することなく、年齢や性別に適した支援を提供し、これらの者が社会的、経済的に孤立しないようにする

Article 6
Victim assistance and environmental remediation
1. Each State Party shall, with respect to individuals under its jurisdiction who are affected by the use or testing of nuclear weapons, in accordance with applicable international humanitarian and human rights law, adequately provide age- and gender-sensitive assistance, without discrimination, including medical care, rehabilitation and psychological support, as well as provide for their social and economic inclusion.

もしも日本がこの条約に批准していた場合、原爆によって被害を受けた方への人道支援がより充実したものになったのでしょうか。

調べてみると、現在でも厚労省が原爆関係の援護施策を行っており、今年度の予算額は約1219億円です。

www.mhlw.go.jp

もしかすると、日本が後述のオブザーバー参加をした場合、先行事例として被爆者支援政策を各国に教えることができるかもしれませんね。

 

第8条(締約国会議)

五、本条約の非締約国ならびに国連システムの関連機関、その他の関連国際機構と機関、地域機構、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟、関連の非政府組織は締約国会議や再検討会議にオブザーバーとして招待される

Article 8
Meeting of States Parties

5. States not party to this Treaty, as well as the relevant entities of the United Nations system, other relevant international organizations or institutions, regional organizations, the International Committee of the Red Cross, the International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies and relevant non-governmental organizations, shall be invited to attend the meetings of States Parties and the review conferences as observers.

こちらが、報道にも出ているオブザーバー参加について定められた条文です。

条約の非締約国はすべからく招待されると思いますので、日本の参加を期待しています。

その際、アメリカや周辺国の動向も見つつという外交判断になるとは思いますが、日本国憲法にも書かれているように、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」「国際社会において、名誉ある地位」を確立していくためにも、大局観と理念を持って決断してもらいたいです。

 

第17条(期間と脱退)

 一、本条約は無期限。

 二、締約各国は本条約に関連した事項が最高度の国益を損なうような特別の事態が発生したと判断した場合、国家主権を行使しながら、本条約脱退の権利を有する。寄託者に対し脱退を通告する。上記の通告には最高度の国益が脅かされると見なす特別な事態に関する声明を含める。

 三、上記の脱退は寄託者が通告を受け取ってから12カ月後にのみ効力を発する。しかしながら仮に12カ月の満了時点で、脱退しようとしている国が武力紛争に関わっている場合、その締約国は武力紛争が終結するまで、本条約および付属議定書の義務を負う

Article 17
Duration and withdrawal
1. This Treaty shall be of unlimited duration.
2. Each State Party shall, in exercising its national sovereignty, have the right to withdraw from this Treaty if it decides that extraordinary events related to the subject matter of the Treaty have jeopardized the supreme interests of its country. It shall give notice of such withdrawal to the Depositary. Such notice shall include a statement of the extraordinary events that it regards as having jeopardized its supreme interests.
3. Such withdrawal shall only take effect 12 months after the date of the receipt of the notification of withdrawal by the Depositary. If, however, on the expiry of that 12-month period, the withdrawing State Party is a party to an armed conflict, the State Party shall continue to be bound by the obligations of this Treaty and of any additional protocols until it is no longer party to an armed conflict.

こちらでは脱退についても定められています。

有事の際、具体的には戦争が起こりそうな場合に脱退する国が増えてしまうのではないかとも思いましたが、脱退を通告してから12か月はこの条約の制限を受けるため、例えば他国から攻められてすぐに核兵器を持つのは難しいでしょう。

また条約で核兵器の生産や所持だけでなく、関連するすべての施設も廃棄することとされていますから、再度核配備をするのは非常にハードルが高いと言えます。

想像ですが、この条文は脱退について定めてはいるものの、その障壁を高くすることで逆説的に無秩序な脱退を防ぐ役割を果たしているのではないかと思います。

 

最終的には、地球上から核兵器が無くなることが理想であると思います。

この条約の締約国には島国やアフリカ、東南アジアや発展途上国も多く、先進国の参加が少ないため実効性に疑問が投げかけられています。

しかし、もはや先進国と発展途上国という枠組みも、米中対立や英国のEU離脱をはじめとしてG7の影響力が低下していることから、過去のものとなりつつあるでしょう。

 

そうしたなか、核合意を破るイランの近くに位置するパレスチナや、冷戦下で戦争一歩手前の舞台となったキューバがこの条約に批准していることは、大きな意味を持つと思います。

日本も、条約の批准は難しいとしても、オブザーバーとして積極的に参加し、実効性に文句をつけるだけではなく建設的な議論をしていくことで、国際社会全体に良い影響をもたらせるのではないでしょうか。

 

司法が米大統領を決めるのか

記事本文

www.nikkei.com

要約

トランプ大統領は司法を支配し力づくで勝とうとしている。

感想

アメリカ大統領選挙の投票日が来月3日に迫り、すでに期日前投票も始まっていますが、混乱が広がっています。

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米大統領選スケジュール

トランプ大統領は選挙に勝つためあらゆる手を講じていますが、そうした思惑が表れているとされる具体例をいくつか示します。

  • 非公式の投票箱を共和党が設置(カリフォルニア州知事によって撤去される)
  • 郵便投票は不正の温床としてすでに複数の訴訟をしている
  • 投票所の数を減らし、バイデン氏の支持層である低所得者層を選挙から締め出す
  • 連邦最高裁判事の多くを保守派にすることで、選挙時に郵便投票分の開票を妨げてトランプ氏が一方的に勝利を宣言、民主党が票の点検等を求めて訴訟を起こしても最高裁が却下する恐れ

こうした措置をしているものの、世論調査ではバイデン氏がリードしています。

 

下の図はそれぞれの州の選挙人の獲得見込みを表しており、大統領選の勝利に必要な選挙人が270人であるのに対し、現時点でバイデン氏が232人トランプ氏が125人獲得する見込みとされています。

残りの181人は「Toss Ups」、意味としてはコインをトスして表裏を見るようなもの、つまり五分五分の激戦区となっています。

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出典:リアル・クリア・ポリティクス

すでにトランプ大統領は選挙について法廷闘争する構えを見せており、選挙が終わっても大統領がしばらく決まらないという事態も十分想定できます。

その際、同盟国である日本は安全保障をはじめどのように国を動かしていくのか、考えておく必要があるでしょう。