〈脱・デジタル後進国〉民間の力を生かし改革に推進力を
記事本文
要約
行政のデジタル化を民間も巻き込んで進めていく必要がある。
感想
国や自治体にはデジタル人材が不足しており、その要因として頻繁な部署異動が行われていることが挙げられます。
キャリア官僚の異動間隔は2~3年、ともすれば1年で配置換えされることも珍しくなく、じっくりと腰を据えて経験を積んでいくのは容易ではありません。
役所ではデジタル化を推進する部署で経験を積んでも、人事異動でまったく違う仕事内容の部署に異動となることがしばしばあり、また上司等の決裁権者がデジタル技術に理解を持っていなければ、仕事にデジタルを取り入れることを正当に評価してもらえないでしょう。
民間のSIerやITベンダーも部署異動や昇進による職務内容の変化はあるものの、コードを実際に書くプログラマ―や、全体をまとめるプロジェクトマネージャー等の違いで会社としてはデジタル技術に触れる機会が多いので、内容を忘れてしまうことも少ないでしょう。
社内の風土としても、デジタルに理解を示す社員が多数派であれば、業務のデジタル化も評価されやすく最新技術を学ぶ意欲も湧きやすいと思います。
また国や自治体に民間のデジタル人材を呼んでも、行政側にデジタルの素養がある人がいなければ、上手く業務を進めるのは難しいでしょう。
これまで手縫いで衣服を作っていた集団が、突然ミシンを導入してもその使い方を知らなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
またミシン側も手縫い側の独特の慣習(例えば玉どめと玉結びは2回ずつやる、決められたワッペンを特定の位置につける等)を知らなければ、能力を最大限生かすことは困難です。
必要なのは、そうした手縫いとミシンの両方を知る、橋渡しとなる人材です。
かならずしも実際にコードをバリバリ書ける必要はありませんが(もちろんできるにこしたことはありません)、「プログラムがどのような仕組みで動いているか」「デジタル技術でどのようなことができるか、どのようなことはできないか」を理解し、かつ行政の独特の文化を知っている人材が、役所にイノベーションを起こすためのカタリスト(触媒)になれるでしょう。
また調査によると行政職員と議員とのやり取りもいまだ対面やファックスが主流であることからも、役所が世間ずれしていると言わざるをえません。
役所内での会議や説明はオンラインですませることが可能であっても、議員は組織外の相手であり、また選挙で選ばれた国民の代表であることから、過剰なほど尊重するあまりオンライン化に二の足を踏んでいるのではないでしょうか。
企業間のやり取りではオンライン化を進めているところも続々と現れており、取引先の多くがそうした技術を取り入れることに理解を持っていれば、デジタル化を進めることもスムーズでしょう。
その観点では、コロナ禍の影響でG7首脳会議ですらテレビ電話で行われていますし、最近は総理が出席する政府の会議にもオンライン会議システムが導入されることが多くなっていますから、党総裁としてのトップダウンで議員にもオンライン化を奨励してほしいものです。