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【社説】2020年10月18日:米中半導体摩擦の激化と日本の針路/デジタル課税の合意を早く

米中半導体摩擦の激化と日本の針路

記事本文

www.nikkei.com

要約

米中対立のなか日本の半導体産業は復活を目指す。

感想

トランプ米大統領と習近平中国国家主席は仲が良いとは言えず、GDPの世界第1位と2位という大国同士で対立しています。

それが健全な競争によるものであれば世界全体の技術革新につながると好印象を持てるのですが、相手を落として自国の利益を生みだそうとしているように見えます。

 

一方が輸出規制をかけると、もう一方も対抗措置として輸出規制をする、そうした二国間の摩擦は、ゲーム理論の「しっぺ返し戦略」をとっているとも考えられます。

しっぺ返し戦略とは、いわゆる「囚人のジレンマ」というゲームが何度も行われる「無限回繰り返しゲーム」を元にしています。

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囚人のジレンマにおける利得行列

上記の利得行列はお互いが協調するとそれぞれ2の利益を得られ、お互いに裏切ると1の利益しか得られず、一方だけが裏切ると裏切ったプレイヤーは3の利益、裏切られたプレイヤーは利益を得られないということを表しています。

ここで自分がPaの立場で考えてみると、相手Pbが協調の戦略をとる場合自分は協調すると2、裏切れば3の利益を得られるため裏切りを選択、相手が裏切りの戦略をとる場合自分は協調すると0、裏切れば1の利益を得られるためこちらも裏切りを選択することが最適な戦略になります。

相手も同じことを考えるため、お互いが自分の利益を最大化させる戦略をとると(裏切り, 裏切り)となり、(協調, 協調)を選択した場合より利益が少なくなってしまいます。

 

囚人のジレンマではこうしたゲームが1回しか発生しないと考えますが(囚人が共犯者を裏切って自白したらその時点で司法取引は終わるため)、外交の場に目を向けるとそれが1回で終わらないことがわかります。

その場合、何回ゲームが行われるかわからないということで「無限回繰り返しゲーム」と呼ばれます。

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映画 鬼滅の刃「無限列車編」

映画館が空いてきたあたりで観に行きたいです。が、人気すぎてなかなか空きそうにないというジレンマ。

 

この無限回繰り返しゲームでは、最適戦略は最初は協調を選択し、相手が裏切りをした場合は仕返しとして自分も裏切りを選択するという「しっぺ返し戦略」となります。

しっぺ返し戦略は企業の値下げ競争や環境問題、そして外交問題にも応用されています。

理論的には、米中がお互いに制裁を加えあうというのは両国の戦略としては適切であると言えるかもしれません。

 

ですが、人類全体の進歩という観点からするとどうでしょう。

お互いの成長のための資源を止めあっていると、両国とも疲弊してしまうのではないでしょうか。

確かに米国が中国への半導体供給を止めた場合、兵糧攻めに遭った中国は困り、そこで新たなイノベーションが起こり未成熟な中国の半導体産業が一気に発展する可能性もあるかもしれませんが、損失の方が大きいのではないかと思います。

 

大国である米中の対立は、両国のみならず貿易する多くの国々にも影響を与えます。

こうした状況のなか日本も半導体産業復活に向け研究開発を進めている動きがあります。

漁夫の利とまでは言えないかもしれませんが、米中のような自分たちの縄張り争いを他国に強いるガキ大将的な態度ではなく、中立的な立場の半導体供給源として日本が世界の発展をリードすることに期待しています。

 

デジタル課税の合意を早く

記事本文

www.nikkei.com

要約

IT企業に対する国際課税のルールづくりは見送られた。

感想

先進国などで構成されるOECD(経済協力開発機構)は今月12日、IT企業への国際課税問題についての合意を来年半ばまで延期しました。

www.oecd.org

元々この合意目標は今年7月までにしようと計画していたところ、10月まで3か月先送りしていた経緯があります。

www.nikkei.com

こちらの国際課税問題が何かと言うと、世界中で利用されるデジタルサービスを提供するIT企業(GAFA等)が、実際に支社や営業所を置いていなくても継続的かつ大規模な事業を行っている場所で、確実に納税させることを目的とする議論です。

IT企業をはじめとする多国籍企業により、各国は税源侵食と利益移転に悩まされていることから、こうした国際課税の必要性が叫ばれています。

 

OECDはこうした問題解決のため、以下の2つの柱を用意しました。

  1. 納税場所についての新たなルールと、各国間で課税権を分け合う抜本的に新しい方法を設定する
  2. 世界全体で最低税額を導入する

OECDは第一の柱が実現することで1000億米ドル(約10兆円)が各国に再配分される可能性があると見込んでおり、さらに第二の柱が実現することで年間で世界全体の法人税収が最大4%、または歳入が1000億米ドル増加すると予測しています。

まあこの税金はIT企業から徴収されるので、彼らからしたらたまったものではないでしょう。

 

元々課税ルールについて議論はされてきたものの、コロナの影響で停滞しているのが現状です。

新興国は経済停滞による財政悪化に対処するため独自課税に動いており、欧米の経済界は企業の新課税ルールへの適応に時間を要することからルールづくりを来年以降に延期するよう求めていました。

またIT企業が多く所在する米国では、課税適用外の企業を増やすことでルールの骨抜きをしようとする動きもあります。

 

OECDは無秩序な課税競争の横行により貿易紛争が起こった場合、世界のGDPが1%以上押し下げられる懸念を示しており、合意に基づく解決策を見出す取り組みをやり遂げねばならないとしています。

きちんとした課税の枠組みを作り上げることはもちろん大切ですが、企業が課税を嫌うことで海外展開を避けるような動きになっては本末転倒です。

 

サービス展開先の国で税収が落ち込むことが問題なのであれば、例えばトヨタが貿易摩擦の批判に対応して海外に工場を設置・現地住民を雇用したように、IT企業は各国に事業所や研究所等を設置し、ローカルできめ細やかなサービスを提供していくことなどを考えてみてはいかがでしょうか。

グローバル企業と各国政府の対立ではなく、歩み寄りによる解決の可能性もあるはずです。